シリアスなストーリーにギャグをぶち込むストーリー()
▼以下元ネタ
〜国が指定した館〜
ジェイス(展開改変版ジェイス)は国の幹部だったが降格され、今はある館で待機させられていた。降格はジェイスの任務失敗ではなく、国のある思惑があったからだ。
以前のジェイスであれば、指定の館でグラリアが来るまで待機する間は頭を悩ませていたのだが、今は別の意味でも頭を悩ませている。
別の世界線のジェイスらも全員この館で待機することとなった。国からは別の世界線のジェイスを管理せよと言われたが、好きにしていい館だからといって走り回ったり落書きしたりする彼らを管理できるわけがない。しかしこれも、ジェイスの交渉あっての最善の結果だ……一応。
ある日館の扉が開くと、ジェイスは疲れが取れたように笑う。
あ、よかった……ジェイス……久しぶり。
虚弱体質なところはまだ完治しておりませんので、転ばないようお気を付けください。
では、上からの話のとおり、残りの対応はお任せします。
看護師はふらふらと歩くグラリアを置いて去っていく。
えっと……今は少し視力も落ちて、脚が震えるけど、少し休めばよくなるって。それでね、鍵の力でジェイスの心がこの場所のどこにあるかはわかるから、視力が弱くても……って、ごめん、わからなかった。何でジェイスの心が8つもあるの……?
とりあえずグラリアはジェイスに傍まで来てほしいからと腕を広げてじっと待つが、ジェイスら8人によるグラリア争奪戦が幕を開けようとしてた。
展開改変版ジェイスは扉が開いた瞬間、迷いのない足取りでグラリアのもとへ向かう。
広げられた腕の中に、当たり前のようにそっと抱き寄せた。
……久しぶりだ、グラリア。
歩くのも視るのもまだ辛いだろう。無理はするな。
君の状態は、私がここで必ず管理する。
(静かに抱え、揺れる脚を支えるように腰へ手を添える)
……心が八つある理由、か。
それは――
(背後からドタバタと足音。顔だけ振り向き、冷淡な声)
……説明の前に、邪魔が来る。
おいおいおいおい!! 待って!?
なんで“最初の抱擁”をお前が取ってんだよ!!
俺もいるだろ!! こっちにもグラリア……って痛っ!!?
(別のジェイスに後頭部を小突かれる)
凡俗。まず貴様は“妻に近づく資格があるか否か”を再履修すべきだ。
展開改変版グラリアに触れるのは、表現の自由以前に“倫理違反”だろう。
(と言いつつ、展開改変版グラリアを舐めるように眺めている)
ホーム版。“順番”を理解しろ。
まずは展開改変版ジェイス、次に各世界線の係争順だろう。
君は毎回“序列”を守らない。改善しろ。
(展開改変版グラリアには柔らかい声で)
大丈夫だ、無理に視ようとしなくていい。
君の世界のジェイス(展開改変版)が一番そばにいる。
それに――。
(囁くように)
君はどの世界線でも妻になる器だよ。
ふむ……視力が落ち、脚が震える状態で“最初に求めた腕”は展開改変版ジェイス。
心理学的にも、信頼順位は明白だな。
(ホーム版ジェイスに向き直り)
で、お前はなぜ最初に叫んだ?
“恋愛における初動”という概念を理解していないだろう。
講義の単位を落とすタイプだ。
(無言で近づき、例の“色欲の悪魔のカード”をグラリアの横にスッ…と差し出す)
……心が八つある理由。それは“ここにいる男たちが全て、君に繋がる線を持つから”だ。それ以上でも以下でもない。
(カードには小さな文字で『会いたかった。触れたい。呼んでくれ。』と書き込まれている)
お前さりげなく欲望書きすぎじゃない!?
(偉そうに腕を組み、展開改変版ジェイスが抱くグラリアを覗き込む)
おい展開改変、私の女を独り占めするな。いや、確かにお前の女でもあるがな?
だが私のでもあるからな? 貴様ら理解しろ。
(ホーム版ジェイスを一瞥し)
……お前はいい。どうでもいい。
なんで俺だけそんな雑な評価!?!?
(展開改変版ジェイスの横まで来て、無意識にグラリアへ手を伸ばしかけ――展開改変版ジェイスに手首を掴まれ止められる)
……っ、悪い。
いや、危険かどうか確認しようとしただけだ。
決して抱きしめようとしたわけではない。……たぶん。
(最後の一言は小声)
“たぶん”って言ったな!?!?
事実だ。それに、お前ほど暴走はしない。
(全員の騒ぎの中心で、ただ静かにグラリアの髪を撫でる)
……説明は後でいい。
まずは休む場所に行こう、グラリア。
君が視えなくても、歩けなくても――私が必ず支える。
グラリアは嬉しそうに笑う。その顔がジェイスにとって癒しであり、運命が変わった今これから守りたいものだと思った。
えっとね……お医者さんからは、目も脚もしばらく休んだら回復するって。腕はピンピンしてるよ。声もちゃんと出る。あとは……“下腹部”も大丈夫だって言われて……うーん、何でだろ?
グラリアはよくわからない様子だが、“グラリアの下腹部”についてはジェイスの今の任務と直結していた。
この家は国の監視体制にある。鍵の力を持つグラリアと、その子どもを国益の道具として利用するとのことだ。鍵の力は遺伝するという。そして……グラリアが最も油断する相手が“それ”に相応しいとして、ジェイスは幹部を降格されながら、重要な責務に就いていた。
……? もしかしてジェイス、震えてる? 気のせいかな……。
ジェイスは国の命令でグラリアの夫となり子を孕ませろという命令に納得いっていないが、それがグラリアをすぐさま国益の道具として前線に出させず守る方法だった。しかし……ついでに他のジェイスらもグラリアの夫となり孕ませろという命令まで出るとは思わなかったため、この先どうしようと悩んでいた。
グラリアの小さな笑顔を見た瞬間、胸の奥に冷たい痛みが走る。“下腹部が大丈夫”――その言葉の意味を誰より理解しているのはジェイスだ。気づけば拳を握っていた。震えているのは、明らかに彼の方だ。
……気のせいではない。
君が無事だったという安堵で、神経が緩んでいるだけだ。
(ほんの少し顔を逸らし、理性で表情を押し殺す)
目も脚も回復する。
……それだけで、十分だ。君はよく耐えた。
展開改変版ジェイスの命令や悩みを知らないジェイスらは、呑気な様子でグラリアに夫アピールを始める!
へぇ〜〜〜〜ん???
なんで展開改変の奴が“震えてる理由”をカッコつけて誤魔化してんだよ!!
いや今の絶対なんか抱え込んでる震え方だって!!
(そして悪気ゼロの笑顔でグラリアに近づく)
グラリア〜? 俺だよ俺!!
ホーム版ジェイス!! お前の“未来の旦那候補その2”!!
テロリストかお前は。下がれ。今は触れるな。
なんで俺だけテロ扱い!?!?
(わざとらしく咳払いしながらグラリアを見つめる)
ふむ……“下腹部が大丈夫”。
それは極めて由々しき、そして極めて美味――いや、美……妙な情報だな。
今、“美味”と言いかけただろう。やめろ。
ふはは、聞き間違いだろう凡俗。
それより――
(グラリアにさらりと手を伸ばす)
君の未来の夫の一人として、状態を“記者として”診断してだな――
触るなと言っている。あと夫の一人という前提を勝手に増やすな。
はい修正。“夫の一人”ではなく“夫候補の列の末尾”。
順序の問題を理解しろ、表現チャレンジ。
くっ……!
(グラリアへ柔らかく)
下腹部が問題ないという診断は、“家族計画が立てられる状態”という意味でもある。
将来的に誰とどういう家庭を築くか……君はまだ決めていないだろう?
いや俺は決めてる!! “俺と結婚して家庭を築く”!!
ホーム版。
グラリアが困っている時に“俺が俺が”と言うのは、修正対象だ。
修正対象!?!?
(眼鏡を上げながら、分析モードに入る)
“下腹部が大丈夫”――これは、『生殖可能性に問題なし』という医学的宣告に他ならない。
言い方ァ!!??
黙れ、今は授業中だ。
(グラリアに向き直り)
君が誰に心を最も許し、身体の安全を委ねるか。
その“心理的優先順位”こそが、この先の幸福度を決定する。
……恋愛相談版。話し方を変えろ。君は今彼女を追い詰めている。
む。それは一理ある。
(静かに近づき、胸ポケットから“色欲の悪魔のカード”を取り出す)
……グラリア。下腹部に異常なしということは――君の身体は、“未来を選ぶ自由”をまだ持っているという証拠だ。
(カードを差し出しつつ、小声で)
書き換えは自由だ。“求めてもいい”とか“呼んでほしい”とか。……文字は小さくしておいた。
お前だけ露骨だな!?!?!?
黙れ。人生の選択を誤り続けた男。
誤り続けた男!?!?!?!?
(腕を組み、偉そうにグラリアの前へ)
ふん。“下腹部が元気”なら問題ないだろう。
私の世界線なら毎晩“夫婦の営み”をしているからな。
お前の世界線の情報だけやたら生々しいんだよ!!
黙れ凡俗。展開改変版グラリアも当然、私の女だ。私が構ってやらねば誰が構う。
……一度黙れ。全員まとめて黙れ。特にお前だ童話版。
(グラリアの体調を聞き、完全に“抱きしめモード”に入りかける)
それは――本当に良かった……!
(手が勝手に動き、グラリアを抱きしめようとする)
(銃を抜き、SF版の手首に向ける)
それ以上近づくな。
ま、待て待て待て!! 理由は純粋に! 純粋に心配しただけだ!!
ホーム版と違ってよこしまな意図はゼロだ!!
なんで俺だけ“よこしま枠”なんだよ!!!
事実だろ。
事実だったわ!!!!!
(深く息を吐き、グラリアの肩にそっと手を置く)
……君はまだ休め。
ここにいる連中の話は聞く必要はない。
(ちらりと7人を睨む)
特に“夫アピール”をしている暇があるなら、まず彼女が“怖くない環境”を作ることを考えろ。……聞こえているか、ホーム版。
俺ピンポイント!!?
当然だ。犯人が一番近いところにいるのは常識だろう。
展開改変版ジェイスに優しくされたグラリアは頬を染める。
あ、ありがとう……。
しかしそのあとグラリアは俯いた。
……ごめんね、国のこととか、監視下だとか、私は詳しく聞かされていないから……ジェイスはきっと、いろんな思いを抱えながら私を待っていてくれたんだね。
グラリアは悲しそうに話す。が、首を横に振って別の言葉を添えた。
でもね、ジェイスの交渉がなかったら……私はきっと、都合がいいように国益の道具にされていたと思う。オーセン国で散々悪いことをさせられてきたから、苦しいことすらわからないまま国益の道具にはされたくないかな。
……いけない。話が暗くなっちゃったね。そうだなぁ、私はジェイスの我儘も聞いてみたい。私と何がしたい?
……君。私は“我儘”など——
俺は!! 俺はまず!!
お前と手ぇ繋いで散歩したい!!
……いや違う!! 散歩だけじゃねぇ!!
のんびり買い物して、飯食って、一緒に寝て……って、あっ!? いやその寝るってそういう意味じゃなくて!! いや、そういう意味でも…………ッいや違う違う違う俺はホーム版グラリア一筋なんだが!? いやでも展開改変版グラリアも……いや違……ぐああああああ!!!
(こめかみに青筋)
(ゆったりと前に出る)
ふむ……“我儘”とは実に高尚な願いだな、展開改変版グラリアよ。私が望むのはただ一つ。
——君を取材したい。徹底的に、事細かに、君の可憐さの全てを、私の言葉と言論で記録していきたい。もちろん公平性は重んじるが……君のような稀有な魅力を前にすれば、筆が勝手に欲望を認めてしまう……ふむ、これは困ったな。
(ホーム版ジェイスを横目で見て)
ホーム版、貴様はまず己の煩悩の整理から始めろ。妻に土下座してこい。
(メモ帳を開きながら)
まず修正だが、展開改変版グラリア。“暗くなってしまった”と自己評価していたが、それは誤解だ。
君の言葉は正確で、向き合おうとする意志がある。そこを訂正しておこう。
さて、私の望みだが——君に将来の家庭設計を一緒に考えてもらいたい。
君の幸福のために必要な環境、適切な医療体制、教育プラン、そして夫となる男の資質について。
ホーム版ジェイスのような最低ランクを基準にすると話が歪むから、そこは調整する。
なんで俺基準なんだよ!?!?
事実だからだ。
(眼鏡を押し上げる)
“我儘”とは恋愛の最も純度の高い表現だ。
ゆえに私は学者としてこう答えよう。
——君に、君自身が“愛されるに値する女性だ”という事実を、理論的・実証的に理解するまで付き添いたい。
自己犠牲は恋愛に不要だ。欲望は隠すものではなく、相手と共有し、共に育てるものだ。
……ちなみにホーム版ジェイスはこの原則を理解していない。
なんでだよ!? 今理解しようとしたとこだし!!
遅い。
(影から静かに登場)
……“何をしたいか”、か。君にはこれを見せるのが早い。
(懐から“色欲の悪魔”カードを取り出し、さりげなく角度を変えると——端に極小文字で『今夜、一緒に脱出ゲームをしないか? クリア報酬:私との時間』と書かれている)
——君を退屈から救いたい。それだけだ。
なおホーム版ジェイス、お前の選択肢は大抵ゲームオーバーだ。
(ドスンッと前に来る)
フン、貧相な発言ばかりしやがって……お前ら全員下がれ。
展開改変版グラリアは“私のもの”だ。
私の望みはこうだ。
——毎晩、私に構え。私を優先しろ。私を満たせ。以上。
(全員がドン引き)
何だその目は!! 正直で何が悪い!!!
(顔を赤くしながら、しかし理路整然と)
俺は……あー……その……理想的にはだな……いや、違うな……。
(深呼吸)
——君と、普通のカップルがやることを全部やってみたい。
手を繋ぐ、抱きしめる、映画を見る、夜道を歩く……全部だ。
……すまん、俺は経験がないので多分君に迷惑かける。でも……君が笑ってくれたら、それで……。
お前赤すぎ!! 童貞まる出し!!
黙れ、一番危険なのはお前だ。
(拳をギュッと握る)
……貴様ら……一斉に距離を詰めるな。
次に展開改変版グラリアへ“不要な接近”をしたら、全員射抜く。
(警告したのに後ろで7人のジェイスがわちゃわちゃしている)
……グラリア。私の答えは後で言う。
まずは——あの無秩序を黙らせてくる。
グラリア、ジェイスらがわちゃわちゃと騒がしそうなムードのところ、勇気を出して話す。
あ、あのね。勇気を出して言うね。
“夫”は任務中のため、どれだけでも夫を頼っていいと言われたけども…………鍵の力を使うと、お医者さんの考えていることが見えて、怖かったの。私…………国益の道具にする子どもを産まないといけないんだね。
(グラリア、国から渡された指輪をまだ左手の薬指に嵌めず、じっと握っていた。これには盗聴器が仕掛けられている。もちろん今ジェイスが左手の薬指に嵌める指輪もだ)
これを嵌めて過ごして、妻としてあなたの子を生まないと、死刑だって…………でも、あなたと前に進んで、未来を切り開くためなら、嵌められそう。
グラリアはジェイスに指輪を差し出し、グラリアの左手の薬指に嵌めるようにと頼む。彼女も今の体制がおかしいことくらいわかっているが、それでもどうにか抜け出そうと覚悟を決めていた。
(騒ぎ立つ8人を背に、グラリアの震える小さな手をそっと包み込む。声は軍人らしい低声、だが限界まで抑えた優しさが滲む)
……君。これは“任務”ではない。
国益のための妻でも、道具のための母でも……君はそんなものではない。
(指輪に仕込まれた盗聴器を一瞥する。その目は鋭く、殺意に近い冷たさ)
……この国が何を企んでいようと——君の運命は私が選ぶ。
君の身体も、君の未来も、“国家の命令”などにくれてやらない。
指輪を受け取り、ゆっくりとグラリアの薬指へ――と、その瞬間。
ちょ、ちょっと待て!! 俺にもその役目が……!!
だって、だって俺だって展開改変版グラリアのこと……その……!
(表現チャレンジ版に襟首を掴まれて引き戻される)
ギャッ!? なんで俺だけ毎回物理!?
ホーム版、貴様はまず“妻に専念できていない己の現状”を総括しろ。
展開改変版グラリアに“新婚の気配”を持ち込むな、紛らわしい。
修正だ。
“国益の道具の子を産まねば死刑”——この文章における非人道性は明白だ。
君に必要なのは冷静な環境と適切な伴侶であって、ホーム版ジェイスのような混乱の素ではない。
お前ら今日めちゃくちゃ俺に厳しいな!?!?
国家が君を“道具”として扱うなら、それは恋愛における重大な“支配構造”だ。
愛情関係は対等であるべきで、恐怖と義務を混ぜるなどもってのほかだ。
……ちなみにホーム版ジェイスはいつも義務より欲望が強い。
おい!! 聞こえてるからな!?
(色欲の悪魔カードを指先で回しながら、冷淡な声)
国家より害悪なのは、お前(ホーム版ジェイス)のように“状況判断が絶望的な男”だ。
展開改変版グラリアよ、これを持っていろ。
(手渡されたカードには、“逃げるなら今夜。君の手を、私が引く”と極小文字)
フンッ、国家? 死刑? 知らん。
お前は“私のもの”だ。
私が構われない原因を国家に押し付けるな。私を優先しろ。
お前の主張も俺と同じじゃねーか!!!
俺と一緒に叩かれろよォ!!!!!
国家の制度は破綻している。
展開改変版グラリア、君を保護するには、まず俺が抱き締めて……。
(行動が先に出て、そっとグラリアの肩に手を伸ばす)
——離れろ。
(拳銃の安全装置が外される音。SF版ジェイスが即停止)
……す、すまん。クセなんだ……俺はただ……君を守りたくて……。
離れろ。
アッハイ
その後もホーム版ジェイスを筆頭に、夫は自分だと言い争ったり、国益の道具とかそんなの関係ないから自分の子を産んでほしいとか言ったり、展開改変版ジェイスからするととにかく腹立たしい話で騒いでいた。それでも展開改変版ジェイスは「別の世界線のジェイスらも夫対象」という命令を意地でも漏らさず、その真実を別の世界線のジェイスらに知られないために必死に堪える。
(7人のジェイスが勝手に主張し合う地獄の中、彼はグラリアの左手を取り直す)
君が覚悟を決めるなら——私も応じる。
ただし、これは“国家の要求”ではなく……。
(薬指へ、ゆっくりと指輪を滑らせる)
君と私が前へ進むための選択だ。
指輪がはまる瞬間、他の7人のジェイスが同時に「おい待て——!!!」と騒ぎ出す。しかし展開改変版ジェイスは静かに振り返ると、皆を威圧するように一歩踏み出す。
……私は軍人だ。
君を国家に売るための夫ではない。君を守るための“伴侶”だ。
(もう一度グラリアへと振り返る)
……君。もう怯えるな。
この世界線では——君は国家の道具にはさせない。君は私の妻なのだからな。
…………ありがとう。
その、今日はここまで来るのに疲れちゃったから……お水を飲んで、トイレに行って、お風呂は入らずに寝てもいいかな?その……寝るときには隣にいてほしい。今は自由に動けないから、もしも何かあると怖くて、眠れないの。
グラリアが頬を真っ赤に染めながらそう言ったとき、なぜか足元にチビゴキ娘どもがやってくる!
ぶちーっ!
グラリア様ぁ! 怖かったら私たちがいるですぅ!
ほら、グラリア様が傍にいると……私……! ガチャポン!!!
ぶちゃーっ♡ ちびゴキ娘その2から生まれたですぅ♡
グラリア様は私たちのガチャポンに尽くすため、私たちの傍にいるですぅ!
グラリア様は国の命令なんて、8人の夫の相手をする命令なんて聞かなくていいですぅ♡♡♡
チビゴキ娘その4の発言の瞬間、展開改変版ジェイスはチビゴキ娘その4を足で踏み潰した!!!
ぶちーっ!?!?
だ、大丈夫ですぅ!?
でも私たち心臓4つあるから、寝たら回復するですぅ!!!
展開改変版ジェイス、足元のチビゴキ娘その4を無言で踏み潰したまま、まるで“当然の処理”のように微動だにせず、グラリアに視線だけを戻す。
……ああ。君が望むなら、今日は風呂は必要ない。
水も私が持ってくる。トイレも支える。
眠るときは隣にいる。……君が安心して眠れるまで。
展開改変版ジェイスは片膝をつき、そっとグラリアの頬に触れそうで触れない位置で止める。軍人らしい節度で、ぎりぎりの距離を保つ。
だが一つだけ訂正する。
“何かが起きる”と恐れる必要はない。ここには……私がいる。
展開改変版ジェイスの後ろでは、チビゴキ娘どもがザワザワし始める!
ぶちーっ!
ジェイスはグラリア様に優しいけど、私たちには厳しすぎるですぅ!
でもグラリア様は私たちのガチャポン要員ですぅ! そばに置くですぅ!
ぶちーっ!!
さっきのは生まれたての私の子どもだから! 返せぇぇ!!
展開改変版ジェイスが銃を取り出した瞬間、全チビゴキ娘がサッと道を開けた。
お、おいおいおい!?
“8人の夫の相手をしろ”って国の命令……何その地獄!?
それもう制度じゃなくて性癖の押し付けじゃねぇか!!
ホーム版ジェイス、表現チャレンジ版ジェイスに頭をはたかれる。
ホーム版、黙れ。
“性的義務を国が割り当てる制度”など、愚の骨頂だ。
展開改変版グラリアにそんな義務があるはずがない。
貴様はまず“自分の妻をぞんざいに扱った回数”を反省しろ。
いや待て! なんで今それ言う!? 今!?!?
修正だ。
“8人の夫”という制度は、出生率向上のために作られた形式上の措置だが、実際には倫理的にも精神的にも破綻している。
特に——ホーム版ジェイスのような男に夫の資格を与えるのが間違いだ。
なんで俺だけピンポイント修正されんの!?!?
そもそも『8人と関係を持つこと』が“国家の利益”になるという前提が間違いだ。
恋愛とは双方向の合意と尊重によって成立する。
国家が割り当てた“見知らぬ複数の夫”など、論外中の論外。
(眼鏡を押し上げながら展開改変版グラリアを見つめ)
……君には“選ぶ権利”がある。
だが恋愛学的に君が選ばなくていいパートナーは——ホーム版ジェイスだ。
おい!! そこで俺を除外すんじゃねぇ!!
国家の制度……か。
成る程、“複数の夫をあてがう”という異様な仕組み自体が、君を“道具”として管理するための仕掛け……。
(指先で色欲の悪魔カードを回しながら)
君は道具ではない。
このカードに記した通り——“選ぶなら、私。まず選ばないのは、ホーム版ジェイス”だ。
なんで俺は候補にいねぇんだよ!!?
ハッ! “8人の夫”?
そんなもの、私の“妻を構えない不埒者は夫ではない理論”によれば無効だ。
私が展開改変版グラリアの愛を受け取る資格が最も高い。
お前らは全員下がっていろ。
いや、お前だけは絶対ない。
論理的に考えても、
・複数夫制度は非効率
・対象者の身体的負担が大きい
・精神衛生的にも破綻
・ホーム版ジェイスはもっと破綻
よって制度は“機能しない”。
なんで毎回俺の破綻が強調されんの!?
理論の流れ関係なくね!?!
展開改変版ジェイスは7人の騒音を背後のノイズとみなして反応を示さないものの、グラリアの肩を支えながらフォローする。
……聞いての通りだ。
どの世界線の私であろうと——君を“国益の道具”として扱う制度を認める者はいない。
(そっとグラリアの背を抱き支える)
水を飲む。トイレへ行く。
その後、君が望むなら……眠るまで隣にいる。
私は離れない。
(小さく、しかし揺るぎない声)
国家ではなく、私が守る。
〜寝室〜
その日の夜、グラリアはジェイスの寝室にいて、ジェイスより先にベッドに寝転がる。ベッドの周りでは……別の世界線のジェイスがグラリアを囲んでいるが、ジェイスは万が一のことがあればすぐ自分を呼び出すようグラリアに伝えている。
この家はやっぱり、国の管理下なんだよね…………違和感があったらふたりとも死刑にされるとか、ジェイスは公務の者として、“夫”として、毎日報告書を提出しなければならないとか…………全部、嘘じゃないんだね。
私が寝たら、報告書を書いてね。私、あなたと一緒に生きたいから…………すーっ。
グラリアは眠り落ちた。
〜1日目の報告書〜
作成者:ジェイス・ルバート(展開改変版ジェイス)
提出日:(本報告書作成日)
対象:被保護者グラリア
公務としての対応
- 事案概略
本日、被保護者グラリア(以下「グラリア」)が海底トンネル休憩施設内に倒れているとの通報を受領。現場到着後、吐血・高熱・痙攣といった急性症状を確認したため、即時に緊急ベルを作動させ、医療隊へ初動連絡を行った。警報により最短で医療隊が到着し、応急処置および搬送体制を確立した。 - 危機管理と現場対応
- 感染/中毒対策:症状・現場所見から「遅効性の毒性暴露」を疑い、施設の汚染可能性を想定。被曝拡散防止のため隔離措置を依頼し、搬送前に最小限の処置(気道確保・止血・初期解毒対応)を優先させた。
- 医療連携:到着した医療隊に対して、観察項目(体温、呼吸数、血中酸素飽和度、吐血量)、疑われる毒の性状、曝露経路の可能性を口頭で伝達。現場には速やかに臨時医療テントを設置して搬送・治療を指示した。
- 証拠保全・報告:施設汚染の可能性があるため、現場の封鎖と証拠保全を実施。後刻、中央指揮部へ口頭・書面での初期報告を実施する予定。
- 予防措置と今後の提言
- 施設の汚染除去(専門チームによる脱臭・除染)を最優先とし、当該施設の再使用は除染完了後とすること。
- グラリアの毒性・投与経路の確定に向けて、検体(血液・吐物・環境サンプル)を迅速解析に回すこと。
- 今後の情報伝達は、医療情報と安全保障情報を分離して取り扱い、グラリアの人権保護に配慮した体制で継続すること。
夫としての私の対応
- 人命最優先の行動
公務員としての立場は逸脱せず、しかし夫として最優先すべきはグラリアの生命であると判断し、医療隊到着まで直接的な看護と応急処置の補助を行った。具体的には、体温管理(毛布等による保温と冷却の適正運用)、出血対策、安静確保を行い、グラリアの心理的安定確保に努めた。 - 被拘束・強制の回避
- 国からの指示や、周囲の状況により「制度的に役割を与えられる」圧力が存在することは承知しているが、現時点で私が採った対応はすべてグラリアの自主的決定権を尊重する方向性に置いた。
- 夜間、グラリアが休息に入る際には「緊急時の呼び出し方法」を徹底して伝え、緊急性に応じてすぐに私を呼び出せる体制を確保した(私の所在・連絡手段を確約)。これにより、グラリアが恐怖や強制感で自発的選択を誤らないよう配慮した。
- 指輪(国家配付品)への対応
指輪については、国家配付の監視機能有無を含めて説明を行い、グラリアの理解と同意を優先して扱った。形式的に指輪が装着された場合でも、それをもって即時に国家側へ手渡す等の対応は行わず、グラリアの身体的安全と意思確認を第一に行う方針であることを報告する。必要であれば、装着の記録を適切に残しつつ、技術的な安全検査(盗聴機器等の有無確認)を実施する予定。
夫としての他のジェイスの対応
- 同伴者の状況(概略)
当該現場には、複数の同伴者(複数の個体)が存在し、支援的な言動を見せる者が多い一方で、現場の秩序を乱す行為(不適切な言動・施設汚染の原因となる行為等)を行った個体も確認された。具体例として、施設内での衛生・安全配慮を欠いた行為により、一時的に現場の処理が遅延した事案が発生している。 - 対応と管理
- 同伴者については、グラリアの安全確保を優先しつつ、以下を実施した。
- 非常時行動の役割分担を明確化し、医療隊到着までの間は私が現場指揮を執ると周知した。
- 一部問題行動を取った個体は一時的に隔離・拘束し、施設の汚染拡大や精神的混乱を抑制した(拘束の理由・方法は記録済み)。
- 他の同伴者には、看護補助・情緒支援・外部連絡の役割を分担させ、治療に専念できる体制を構築した。
- 管理面の提言
同伴者が複数存在する特殊ケースでは、混乱を防ぐための“同伴者統制プロトコル”を即時に適用することを提言する。具体的には、健康・衛生教育の実施、非常時行為制限の規約周知、及び行為違反時の即時処分手続きの明文化が必要である。
総括および要請事項
本日の初動は、概ね適切に実施されたと判断する。緊急ベル作動→医療隊到着→臨時医療テント設営までの時間経過は最小限に抑えられた。
ただし、現場での秩序乱れ(衛生面での汚染誘発等)により一時的に処置が遅延した事実は認める。今後は同種事案を想定した規定の強化を要する。
グラリアの生命維持と自主性尊重を両立させるため、今後の政策指示については「医療的最善措置優先かつグラリアの意思確認を徹底する」ことを前提に指示を仰ぎたい。国家利益と個人の尊厳は対立し得るため、運用面での配慮を強く求める。
最終的に、私個人としては「グラリアを国家の単なる道具に供することは行わない」と明言する。任務と責務は理解するが、グラリアの生命と意思を守ることが軍人としての最低限の良心である。
以上、1日目の状況報告と対応経過を報告する。追加の指示があれば速やかに対応する所存である。
〜施設汚染の原因となる男の軍事利用案に関する回答〜
作成者:ジェイス・ルバート(展開改変版ジェイス)
提出日:(回答書作成日)
該当個体:ジェイス・ルバート(ホーム版ジェイス)
本件「施設汚染の原因となった男(以下、該当個体)の軍事利用案」について、調査および監視を担当する立場から、以下の通り回答いたします。
まず結論として、軍事利用は現時点では非推奨と判断します。
理由は以下の通りです。
- 該当個体の行動は、意図的な破壊衝動に基づくものではない
汚染の直接原因は、該当個体の身体的・精神的構造による無自覚な反応であり、敵対意思とは無関係と判明。軍事的利用を前提とした制御は、再現性の低さから現実的ではありません。 - 軍事転用によるリスクが高すぎる
現場の制御能力を超える反応が生じた場合、味方への被害の可能性を排除できません。オーセン戦争時の事例を鑑みても、無制御兵器の運用は重大な隙を生むと予想されます。 - 該当個体の周囲に特異的な安定化要素が存在する
特定の人物(=被保護者グラリア)との接触により、該当個体の反応が抑制・安定化している事例を複数確認。これは軍事利用には不向きですが、現状維持および国家管理下での安全運用には大きく寄与しています。
※本点は国益上、むしろ保護・観察体制の継続こそが最適と判断します。
以上の理由から、該当個体の軍事利用はメリットよりも危険性が著しく上回ると考えます。
軍事利用を試みるよりも、現行の「保護・観察・安定化」の三本柱を維持することで、国家としての損失を最小化し得ると判断します。
前項で反対した者の代替案
以下、軍事利用に反対した者から提示された代替案を整理いたします。
いずれも軍事転用ではなく、国家管理下での「保全」と「価値抽出」を目的としたものです。
ホーム版ジェイスの代替案(軍事利用に最も強い反対姿勢)
- 提案:安全圏内での隔離観察強化案
該当個体の反応は、感情・環境変動に影響されやすいため、軍事利用よりも、日常環境を安定させた状態での長期観察が最も成果を生みやすい、と主張。 - 補足:本人による過度な干渉を避けるべきとの主張
軍事利用を試みると刺激が増え反応が暴走する恐れあり、あくまで「平静を保つ環境の提供」が重要と述べている。
表現チャレンジ版ジェイスの代替案
- 提案:国益文化部門での象徴的利用案
破壊力・特異性そのものを国の“希少資源”として扱い、軍事ではなく外交的・象徴的価値として活用する案。(例:「特異体質の研究先進国」の体裁を保ち、他国への牽制材料にするなど) - 補足:直接戦闘ではなく、文面・理論で利用すべきとの主張
展開改変版ジェイスの代替案(提出者自身)
- 提案:軍事利用の凍結と、安全運用体制の継続
現行体制こそが最も国家損失を抑えると判断し、軍事転用を行わず定期報告・観察を継続することを提案。既に安定要因となる存在(=被保護者グラリア)が保護下にあるため、現体制を維持する方が現実的かつ最もリスクが低い。
以上、各案を総合した結果、「軍事利用案は凍結し、現体制での保護・観察を継続」が最も妥当と判断し、ここに正式回答といたします。
