作者「これはログ。趣味と誤字脱字の悪さはそれ以上でもそれ以下でもない」
〜国が指定した館〜
救助されたあと、グラリアは国に任命された医師により手術され、様々な後遺症が残ったが一命は取りとめる。
ジェイスは国の幹部だったが降格され、今はある家で待機させられていた。降格はジェイスの任務失敗ではなく、国のある思惑があったため、待機する間頭を悩ませていた。しかしこれも、ジェイスの交渉あっての最善の結果だ。
ある日家の扉が開くと、ジェイスは疲れが取れたように笑う。
えっと……ジェイスは向こうに……?
ええ、あちらにいます。
では、上からの話のとおり、残りの対応はお任せします。
看護師は車椅子に座ったグラリアを置いて去っていく。
えっと……鍵の力でね、ジェイスの心がこの場所のどこにあるかはわかるんだけど、どこにいるかまではわからなくて……ジェイス、ここまで来てくれる?
後遺症で盲目になったグラリアは、腕を広げてじっと待っていた。
扉が静かに閉まる音とともに、ジェイスはゆっくりと歩み寄る。疲れはあるが、顔には少しだけ笑みが戻っている──いや、戻したというよりは、戻らざるを得なかったのだ。
……ここにいる。どこにいるか分からないだなんて、随分おおげさな自慢話だな、グラリア。
膝を軽くつき、車椅子の横に腰を下ろす。盲目になった彼女の手が空中を探るのを見て、そっと自分の手を差し出す。指先が触れた瞬間、そこに確かな温度を感じ取る。
ほら。手を取れ。私の指の感触を覚えておけ。ここにいるのは私だ。命を賭して守ると約束した相手が、手ぶらで来るわけがないだろう?
言葉は冷たくもあるが、その裏にある決意は揺るがない。少し吐息を混ぜて、続ける。
国の上がどう騒ごうと、私の仕事は終わっていない。降格だの待機だの——余計な札はいっぱい渡されたが、あれは全部、君が無事でいるための交渉の代価だ。最善の結果を取り付けたのは私だ。いいか、小娘、私が動いたからこそ今ここにいるんだぞ。
ジェイスの手がグラリアの掌を包み、親しげに指を絡める。その動作は粗野でありながら確かに優しい。
盲目になっただの、後遺症だの……そんなラベルで君を閉じ込めるつもりはない。君が“普通の女の子”だって思える時間をもう一度やるために、私はここにいる。君が見えぬなら、私が見る。君が不安なら、私が道を作る。好き勝手に甘えろとは言わんが、頼る権利はある。
(そっと額を彼女の手の甲に寄せる。普段の嘲りは消え、ただ静かな誓いだけが残る。)
さあ、まずは深呼吸しろ。ここから先は私が車椅子を押す。長い話や、聞きたいことは山ほどあるだろうが、急ぐ必要はない。お前のペースで、私と一歩ずつ進めばいい。
(わずかに含み笑いを含めて、けれど真剣に。)
覚えておけ。どれほど世間が理不尽でも、どれほど災いが君に付きまとうとも――私はお前を置かない。面倒くさい存在だと罵っても構わん。だが、それでもいいか、小娘?
えっと……鍵の力でね、ジェイスの心がこの場所のどこにあるかはわかるんだけど、どこにいるかまではわからなくて……ジェイス、ここまで来てくれる?
グラリアは嬉しそうに笑う。その顔がジェイスにとって癒しであり、罪悪感とこれからの罪を抉るものであった。
えっとね……お医者さんからは、目はもう回復しないかもしれないって。脚は……リハビリを続けたら、治るかもって。腕はまだ上がるから大丈夫だよ。声もちゃんと出る。あとは……“下腹部”も大丈夫だって言われて……うーん、何でだろ?
グラリアはよくわからない様子だが、“グラリアの下腹部”についてはジェイスの今の任務と直結していた。
この家は国の監視体制にある。鍵の力を持つグラリアの身体が回復する見込みがないため、彼女の子を利用するとのことだ。鍵の力は遺伝するという。そして……グラリアが最も油断する相手が“それ”に相応しいとして、ジェイスは幹部を降格されながら、重要な責務に就いていた。
……? もしかしてジェイス、震えてる? 気のせいかな……。
……ふん、震えてるだなんて、情緒不安定な観察力だな、グラリア。
だがその口調とは裏腹に、ジェイスはわずかに肩を震わせている。震えは寒さでも恐怖でもない――怒りと苛立ち、そして深い罪悪感が胸を掻き毟っているからだ。目の前でグラリアが無邪気に笑うたびに、そのたびにジェイスは自分が払った代償を思い出す。
言っておく。今の私の震えは『気のせい』ではない。腹の底から湧き上がる怒りだ。国が、幹部が、そして体制が……お前の“下腹部”を計算の駒として扱うだなんて。ふざけるな。
(手を強く握り、車椅子の背を押す。言葉は冷たく、だが決意は熱い。)
だが聞け、小娘。私はここにいる。表向きは国の監視下にあっても――お前の命と意思を踏みにじらせはしない。幹部が何を望もうと、私はお前を利用させないために動く。証拠をねじ伏せる、代わりの策を探す、外に出す術を作る……可能な限りの手は尽くすつもりだ。
(視線をじっとグラリアに戻し、普段の嘲り混じりの態度は薄くなるが、言葉は相変わらず刃のようだ。)
誓えるかどうかは別だ。だが一つだけ約束する。お前が『道具』として扱われることを、私が指を加えて見ているような愚は犯さない。たとえ世間が何とほざこうと、私ができる限り、君を守る。分かったか、グラリア。
(軽く含み笑いをし、粗野に手の甲を彼女の膝に置く。ほどよく力を抜いた、いつもの気取った調子で。)
さあ、まずは屋内を少し散歩しよう。今は話を詰める時ではない。君の声が出るうちに、私の耳に直接言わせてみろ——文句を言え、わがままを言え、未来の注文をしてみろ。私は聞く。どこまでも、鬱陶しく守ってやるからな、小娘。
……ごめんね、国のこととか、監視下だとか、私は詳しく聞かされていないから……ジェイスはきっと、いろんな思いを抱えながら私を待っていてくれたんだね。
ジェイスに車椅子を押されながら、グラリアは悲しそうに話す。が、首を横に振って別の言葉を添えた。
でもね、ジェイスの交渉がなかったら……私はきっと、身体の自由が利かないまま、都合がいいように国益の道具にされていたと思う。オーセン国で散々悪いことをさせられてきたから、苦しいことすらわからないまま国益の道具にはされたくないかな。
……いけない。話が暗くなっちゃったね。そうだなぁ、私はジェイスの我儘も聞いてみたい。私と何がしたい?
ふん……いきなり重い話を振られても困るが、そう言ってくれるだけで少しは救われるな、グラリア。
(少し息を吐き、口元にいつもの冷やかしを混ぜつつも、声は柔らかい)
さて、我儘か……いいだろう。私の我儘を聞きたいというなら、遠慮は無用だ。だが覚えておけ、私の望みなど大層たいしたことはない――ただ、お前が穏やかに笑っていてくれればそれでいいのだ。
(少し間を置いて、淡々と、しかし真剣に挙げる)
私が望むこと——
1. お前の笑顔を飽きるほど見ること。面倒でも、ふざけても、無防備でも構わん。
2. 些細なことで文句を言わせろ。私に愚痴をぶつけてきて構わん。受け止めるのが私の役目だ。
3. 一緒に食事をすること。お前の焦げた卵焼きでも、私が食べてやる。今度は私のシチューと替えっこだ。
4. たまには外を歩き、私にお前の手を握らせろ。お前が見えなくても、私が道を作る。
5. 最後に――お前が本当に望むときに、お前の意思で未来を選べるように、私が出来る限りの手を尽くすことだ。
(言葉を切り、含み笑いを零す)
……どうだ、期待外れかもしれんが、私の“我儘”は概ねそんなところだ。お前の我儘も聞く。互いに鬱陶しく、しかし大切にし合う関係でいよう。さあ、小娘、まずは今日の我儘は何だ? 私に命令してみろ——断る権利はもちろん、嫌味たっぷりに行使するがな。
焦げた卵焼き……。
グラリアは涙をポロポロと零す。
……ごめんね。今の私じゃ何も作れないし、介護が必要で、ジェイスがいないと生きていけないくらい弱くて…………。
ジェイスにとってその言葉は重かった。あのとき意地を張らず警報機を鳴らせばグラリアが助かったと思うと……しかしそれではグラリアが国益の道具になる道しかなかっただろう。ジェイスの交渉が効いたのは、グラリアは介護が必要なほどの身体になっているからだ。
ジェイスも相当だが、グラリアの心は随分と弱っている。今日は何かを話そうとしても、グラリアは落ち込んでしまうかもしれない。だが……。
……お風呂とトイレ、どうしよう…………。ごめんね、ジェイス。今日からはその、お世話になるから、なるべく迷惑をかけないようにするから……ごめん。
……ふん、謝るな、小娘。
(手をぎゅっと握り返し、冷笑を一瞬だけ消して真剣な声で続ける)
今から先のことを『迷惑』だと考えるな。お前が弱っているのは事実だが、だからといって価値が下がるわけではない。私がそばにいる限り、風呂もトイレも着替えも看護も全部、私が責任を持ってやる。恥ずかしがる必要はない——私の仕事だ。
(不器用に含み笑いを漏らしながら、淡々と段取りを示す)
具体的にはこうする。
1. 今日から当面は私が身の回りの世話をする。入浴や排泄の介助、着替えの補助は私が行う。遠慮は無用だ。
2. リハビリや理学療法は専門家に任せる手配をする。筋力回復と自立のための訓練を私が段取りするから、協力して続けろ。
3. 日常生活で使える補助具や環境改修(手すり、入浴補助など)を整える。目が見えなくても安全に動けるようにする。
4. 私はお前の意思を第一にする。羞恥や不安があれば遠慮なく言え。文句も愚痴も全部聞く。受け止めるのが私の役目だ。
(少し吐息を混ぜて、いつもの皮肉混じりに)
……お前が『迷惑かけたくない』なんて殊勝なことを言う必要はない。私を使い倒せ、小娘。私は面倒を見るためにここにいる。だが一つだけ条件がある——手を抜くな。リハビリも、私への反抗もだ。どちらも存分にやれ。
(指先で軽く額を撫でるように触れ、わずかに口元を緩める)
焦げた卵焼きの話はまた今度だ。今はまず体を休めろ。私がそばにいる。何があっても、お前を押しつけるような言葉は吐かせん。
ジェイス……提案は嬉しいけれど、ごめんなさい。その……お医者さんから、国に許可されたところ以外で介護やリハビリ等は受けてはならないと、なるべく“夫”に頼むようにと言われて……“夫”は任務中のため、どれだけでも頼っていいと言われたけども…………今の私じゃ鍵の力が弱くて、お医者さんの考えていることを読み解くことができなかったんだ。
(グラリア、国から渡された指輪をまだ左手の薬指に嵌めず、じっと握っていた。これには盗聴器が仕掛けられている。もちろん今ジェイスが左手の薬指に嵌める指輪もだ)
これを嵌めないと、死刑だって…………でも、あなたと前に進んで、未来を切り開くためなら、嵌められそう。
グラリアはジェイスに指輪を差し出し、グラリアの左手の薬指に嵌めるようにと頼む。彼女も今の体制がおかしいことくらいわかっているが、それでもどうにか抜け出そうと覚悟を決めていた。
ジェイスは指輪を受け取ると、無造作にそれを指で弄り、表面を確かめる。薄く冷笑を浮かべつつも、その目は鋭く光っている。
……ふん。然るべき監視措置が施されているのは当然だ。だが、君がそれを嵌めるという覚悟をしたなら、私はその覚悟に応える。
ジェイスはそっとグラリアの左手を取る。いつもの皮肉めいた口調は抑え、動作は慎重で丁寧だ。指先で薬指にリングを滑り込ませる。
……はい、嵌めた。似合うかどうかは、後で文句を言わせてもらうがな。
指輪の冷たさが指に残るのを確かめながら、ジェイスは視線を落として低く囁く。
聞け。私がこの“夫”の仮面を被るのは、表向きだけだ。国の監視も、指輪の仕掛けも、全て私が把握して潰す――少なくとも情報を操作する余地は作る。今は医療と介護を受けさせるために嵌めるのはしかたない。だが、君の意思を奪わせはしない。
指先でグラリアの手をぎゅっと握り、普段より柔らかい声で付け加える。
私はこの指輪を“束縛”の象徴にさせはしない。外す方法は必ず探す。そして、君が本当に望む時に、君自身の言葉で未来を選べるようにする。約束は、私が命を賭したものだ。
(やや苛立ちを含んだ微笑を浮かべ、いつもの調子に戻りながらも真剣に。)
さあ、小娘。今は無理せず休め。用があれば私を呼べ。私はここにいる――お前の“夫”として、そして何よりも、お前を守る者として。
…………ありがとう。
その、今日はここまで来るのに疲れちゃったから……お水を飲んで、トイレに行って、お風呂は入らずに寝てもいいかな?その……寝るときには隣にいてほしい。今は自由に動けないから、もしも何かあると怖くて、眠れないの。
……ふん、甘ったれるな、小娘。
(一瞬だけ素っ気なく見せてから、素早く立ち上がり水差しを取りに行く。戻るとコップを差し出して冷たい水を口元まで運ぶ。)
水はこれだ。無理に一気に飲むな。少しずつだ。
(手を取ってゆっくり介助し、立ち上がるのを補助する。トイレまで確実に支えて歩き、滑ったりしないように注意深く扱う。)
風呂は今日はやめておけ。体力を使うだけでリスクが高い。明日以降、体調を見て改めてだ。
(ベッドに戻すと、毛布を整え、そっと隣に腰を下ろす。)
隣にいる。目が見えなくても私は分かる——お前の呼吸も、震えも、吐血の頻度も全部な。何か変だと思ったらすぐに言え。声が出しにくければ、軽く手を握れ。私はそれで察する。
(ぐっと手を握り返し、低く)
眠れないなら、無理に寝ようとするな。だが、安心して眠れるように私はここにいる。腕枕ほど礼儀正しくはないが――手を握ってやる。小娘、好き勝手に甘えてみろ。私はお前を放さない。
(わずかに含み笑いを浮かべ、しかし決意は固く)
さあ、水を飲め。そして遠慮なく頼め。私はここにいる。分かったか?
〜寝室〜
水を飲んでトイレに行き、ベッドまで運ばれたあと、グラリアはジェイスにギュッとしがみつく。
……介護、ありがとう。恥ずかしかったけど、この人なら任せられるって思ったよ。
……吐血のこと、聞いてたんだね。まだ完全回復とはいえなくて、途中で体調を崩すかもしれないから、安静にしても良くならなければ、家の中にある警報機を使ってお医者さんを呼んでね。
この家はやっぱり、国の管理下なんだよね…………違和感があったらふたりとも死刑にされるとか、ジェイスは公務の者として、“夫”として、毎日報告書を提出しなければならないとか…………全部、嘘じゃないんだね。
私が寝たら、報告書を書いてね。私、あなたと一緒に生きたいから…………すーっ。
グラリアは眠り落ちた。
〜1日目の報告書〜
作成者:ジェイス・ルバート
提出日:(本報告書作成日)
対象:被保護者グラリア(当該者の状態および本日対応報告)
公務としての対応
- 事案概略
本日、海底トンネル休憩施設において被保護者グラリアが重度の発熱および吐血を呈し、生命の危険に直面した事案を確認。現場にて私が応急措置を実施し、同施設の緊急ベルを作動させ医療隊を招集、速やかに医療機関へ移送し手術処置を受けさせた。結果として被保護者は一命を取り留め、当局管轄下の医師による処置と継続的な管理下に置かれている。 - 公務的判断と理由付け
- 緊急性の高い医療対応は国家・人命保護の最優先であるため、即時の救命措置を実施した。
- 当該措置により被保護者の生命を保持することができ、国家が管理しうる状況(監視・医療提供の継続)を確保した点は、公務として正当であると判断する。
- 一時的に現場での私の行動が任務上の手続きと齟齬を生じさせたと受け取られる可能性はあるが、本件は「人命優先の緊急対応」であり、事後の説明と手続きをもって責任ある処理を行う所存である。
- 具体的実施事項(時系列)
- 発見〜応急処置:発熱・吐血の確認、応急止血・保温・体位保持、緊急ベル作動(施設警報)による医療隊招集。
- 医療連携:現場到着の医療隊へ速やかに状態を引き継ぎ、移送後は担当医と情報共有。術後の経過観察とリハビリ方針を確認済み。
施設管理:現場の封鎖及び証拠保全(当該手配書等関連資料は回収・提出済み)。必要に応じて捜査部門へ引き継ぐ準備あり。 - 上申・報告:本報告書をもって一次的な事実経過と判断理由を上申する。追加調査や指示があれば速やかに対応する。
- リスク評価と提案
- リスク:被保護者の特殊能力(鍵の力)に起因する情報漏洩・第三者介入の懸念、並びに敵対国(想定される勢力)による攪乱行動。
- 対策提案:監視体制の強化(人員の再配備と通信監視の強化)、被保護者の医療長期管理計画策定、心理ケアと情報遮断措置の明文化。
- 公務効率化のため、現場での臨機処置に関する「人命最優先」の判断基準を再確認・承認いただきたく存じます。
夫としての対応
- 個人的対応方針(公務と私情の線引き)
私は本件において「公務」としての責任を放棄したわけではない。しかし、被保護者が生命の危機にある場面では、人命保護を最優先に行動した。私情は表に出さないが、被保護者の信頼回復と人的ケアは長期的に国家利益にも資するため、夫としての立場を一定の範囲で受け入れている。これは国家の監督下における「被保護者の安定確保」のための合理的措置であると理解いただきたい。 - 日常的ケアと保障措置(既に実施・調整中の項目)
- 日常生活支援:屋内移動・排泄・飲水等、日常的介助の実施(私が一次的に担当)。
- リハビリ調整:医師と連携の上、適切なリハビリ計画の段取りを進行中。専門家手配、訓練計画の作成を提案済み。
- 情報統制:被保護者の会話・接触範囲は監視の下で限定的に行う。必要情報は逐次上申し、監督機関との齟齬を最小化する。
- 精神的ケア:被保護者の不安軽減のため、日常的な対話・安心確保を実施。これは回復促進に資するため、医療的観点からも有益である。
- 公務遂行を阻害しないための誓約と条件
- 私は公務の監督指示に従い、必要な報告書・手続きを適時提出する。
- ただし、被保護者の生命維持・回復に資する措置は優先し、その理由と経過は事後速やかに説明・記録する。
- 指輪等の監視機構については、情報操作・保全の余地を探りつつ、被保護者の意思と安全を最優先に扱う方針である(詳細手段は別途上申のうえ協議を希望)。
総括および要請事項
本日発生した事象は、迅速な医療対応により被保護者の生命を維持した点で成果を上げた。一方で、被保護者の特殊性と敵対勢力の存在は依然として高リスクである。国家の安全保障並びに被保護者の人権・生命を両立させるため、以下の点についてご理解と指示を賜りたい。
- 当該被保護者の医療処置およびリハビリに関する継続的支援の確約。
- 監視・保全体制の透明化(関係部署間での情報共有と責任分担の明確化)。
- 私の一時的な役割(被保護者の世話および交渉窓口としての行動)について、事後的な職務判断の評価・了承。人命優先の措置に関する事務的な免責または正当化を希望する。
- 被保護者の安定化が確認されるまでの間、医療・心理カウンセリング体制の強化を要請する。
最後に一言、個人的見解として――被保護者の回復は国家の安定にも資する。短期的な手続きや監視の利便性により、彼女の生存と回復を優先しないことは、長期的に見て大きな損失を招く恐れがある。今回の応急措置と私の行動は、結果的に国家の利益を守るための最良の選択であったと確信している。詳細については随時、追加報告を行う。
以上。
〜報告書提出〜
ジェイスは報告書を書いたあと、机の上に置かれた特殊なベルを鳴らす。しばらくすると赤い鳥が窓までやってきて、ジェイスが書いた報告書を咥えて飛び去る。
彼らの今の最優先の目的は、グラリアの完全回復ではないだろう。そして、彼女の身体はリハビリが必要で自由に動けないことを逆手に、子を孕ませることを優先にするだろう。ジェイスの要望は恐らく通らないが、何も主張しないよりはマシだ。
